もののけ探険隊 【DAY4】漁業の未来を考える眼差しと絶品トビウオ 2017/10/13

漁師の朝は早い。4時30分、まだ暗闇に包まれている安房港に集合。ライトで足元を照らしながら船に乗り込みます。今回、 風人丸 の船長「田中 みのる」さんにご協力いただいて、トビウオ漁に同行させていただくことになりました。実は、トビウオは屋久島の特産品。その漁獲量は屋久島や種子島を含んだ鹿児島県が日本一なんですよ。「トッピー」という愛称で呼ばれたり、本州と種子島、屋久島をつなぐ高速船には「トッピー」が描かれていたりと、現地の人々に親しまれています。

トビウオ漁は本船と片船の2隻で行う、追い込み漁。網に「ビロウ」と呼ばれる黄色と白のビニール紐が取り付けられており、ビロウが海中でひらひらと揺れることでトビウオを驚かせ、追い詰めていきます。本船乗組員は船長田中さんと、なんと女性の漁師である「伊藤」さん。お二人とも関東出身で屋久島に移住してきたんだそう。片船には、屋久島生まれ屋久島育ちの「酒匂」さんが乗船。50代とは思えない腹筋の持ち主。年上の奥さんの手料理が、酒匂さんの日々の身体を支えてくれているそうです。

5時に安房港を出港。波は非常に落ち着いていて、海の穏やかさに包まれながら、沖へ向かいます。日の出まではサーチライトで海を照らし、飛び立つトビウオを探します。数十匹が一斉に飛ぶこともあれば、一匹が単発で飛ぶこともあるそう。一匹の場合は、そのトビウオが群れからはぐれたものなのか、群れの中の一匹なのかを船長の経験から判断するそうです。「はぐれたトビウオは、ジプシートビウオって言ってるんだ。ジプシートビには騙されないようにしなくちゃね。」と白い歯を輝かせ笑う田中さん。何十年もの経験で培われた自身の目だけが頼りという、原初的な方法に心動かされます。

空が白くなりはじめ、種子島から美しいご来光を拝むころ1回目の網入れが開始。本船から網を入れ、片船がそれを受け取り、2隻で網なりを正常に保ちながら曳き流します。飛沫を浴びながら、果てしなく続く海の上を進み、進み…。なんど網の長さは1,500m以上。30分ほどで網を全て入れ終えた頃には、片船は遥か彼方に。ここまで長い網を曳けるのは漁場は珍しく、他船の航行が少ない屋久島だからこそなんだそうです。

さぁ、お待ちかねの網上げが始まります! 片船が本船の周りをぐるっと円を描くように一周し、片船分の網を手繰り終わると、酒匂さんはウェットスーツとマスク姿に着替え、海へ豪快にダイブ。時折、水面を叩き、トビウオを網から逃がさないように脅かしながら本船へ乗り込み、3人で残りの網を巻き上げます。揺れる船の上での、一糸乱れぬ連携のとれた動き。こちらも真剣に見つめてしまいます。しかし、1回目の網は残念ながら不発。トビウオ20匹、ダツ4匹、シイラ1匹のみ。「今の時期はこんな感じかなぁ。」と田中さん。「でも、折角だから良い写真撮ってほしいね。」と自ら気合を入れてくださり、再びトビウオを探しに海を走ります。

田中さんの想いが伝わったのか、2回目は大当たり! 網には、目を青々と輝かせたトビウオがたくさん。船の上は1,000匹以上のトビウオであふれかえりました。獲れたトビウオは箱詰めをし、氷で鮮度を保ちながら保管します。トビウオの鱗を飛び散らせながら、正確に、かつ迅速なスピードで箱詰めをする伊藤さん。身体中に鱗がついたその姿は、日の光を浴びてキラキラと輝いていました。

そして、船の上で嬉しいサプライズ。なんと獲れたトビウオをその場で伊藤さんが捌いてくれることに。手慣れた様子でトビウオに包丁を入れていく伊藤さん。彼女は以前は関東で働いていましたが、屋久島の自然に惚れ込み移住を決意。漁船に乗るようになってからは、ちょうど1年なんだそう。「1年続けられたから安心した。いつかは漁師として独り立ちしたい。」と、愛らしい笑顔で語ってくれました。

あっという間にトビウオのお刺身が完成。先ほどまで生きていたトビウオの身。普段スーパーで買うお刺身では到底味わえない様々な感覚とともに、トビウオの命を頂きました。その味には美味しいを超える何かがあり、食というのはシチュエーションや背景を知ると、より味わい深く、有難くいただけるものなんだなぁと実感。食べ終えるのを惜しく感じながらも、遠くに見える屋久島の緑と、広大な海に感謝をしながら、「ごちそうさまでした。」

その後、もう2回網を投げるも、どちらも奮わず、14時までに漁協に魚を卸すため港へ戻ることに。漁協の方が迎えてくれる中、トビウオが詰まった箱を船から引き上げ、次々に漁協へ運びます。「風人丸」と書かれた紙を箱の1つ1つに入れ、量を計り、後は漁協の方に引き渡しました。とにかく陽射しが強く、酷暑の中の漁となりましたが、皆さん、快くもののけ探検隊を受け入れてくださりました。船長の田中さんは屋久島に移住して漁師になり、既に20年以上。今はトビウオ漁専門で生計を立てていらっしゃいます。「屋久島のトビウオ漁は混獲が少なく、また、網目も大きく、トビウオの生態系を考えた持続可能な漁であるのが特徴であり、素晴らしいところなんだよ。」と語ってくれた、田中さん。屋久島の漁業の未来を考える眼差しは、今でも香る海のにおいとともに思い出されます。

夜には、頂いたトビウオを『パワーハウス®LP ツーバーナーストーブ Ⅱ』と『アルミクッカーコンボ』を使って揚げてみました。まだ新鮮な青さが残るトビウオを大胆に素揚げ! トビウオならではのヒレが大迫力、かつサクッと美味しい。昼間にいただいた刺身も最高でしたが、夜の空気をまといながら熱々でプリプリのトビウオを頂くのも乙なものですね。すだちの果汁をかけたら、さっぱりとした味わいに変化。もっと、トビウオの色んな美味しさを追求したくなった屋久島の4日目の夜でした。

 

~お世話になった人・場所~

屋久島漁協

~使用したコールマンギア~