自然のなかの原体験こそ地頭を鍛えるカギがあるのよ!

尾木ママが語る、家族キャンプの“すごい力”

日本の子どもたちの学力低下が大きな問題となるなか、世の中では早期教育に力を入れるパパ、ママが増えています。
でも「尾木ママ」こと教育評論家の尾木直樹さんは、「子どもの能力を伸ばすなら、早期教育よりも家族キャンプ!」と訴えます。

なぜ早期教育より、家族キャンプがいいのでしょう。尾木ママにそんな「?」をぶつけてみました。すると…

日本の学力の捉え方が世界で問題化?!

実はいま、日本の教育は世界の潮流からだいぶ遅れちゃっているんです。
OECD(経済協力開発機構)が15歳の生徒を対象に3年毎に実施しているPISA(生徒の学習到達度調査)の結果をみると、日本の子どもたちはいわゆる読み・書き・計算といった基礎学力の得点は高いけれど、図表や資料を活用しながら答えを導き出すような問題や、答えが複数あるような文章問題が苦手なんです。

グローバルな社会で求められる「学力」というのは暗記力や計算力ではなくて、学んだことをいかに生活のなかで活用できるかという力なんですね。
何か想定外のことが起きた時や未知の世界に遭遇した時に対応できる力だったり、新しい価値を発見する力。
そういう「学力」を子どもたちにどう身につけさせるかを、真剣に考えなければなりません。

日本では「脱ゆとり教育」ということで、知識や技能の量をたくさん詰め込む教育が復活しています。
でもすでに分かっている知識を覚えて、ペーパーテストで点を取っても、本当の「生きる力」は身につかない。だって世の中には問題がたくさんあって、分からないことだらけでしょ。想定外のことがたくさん起こる。その時どうすればいいか、どういう行動をとったらいいかを自分の頭で考えられれば、他者と協働しながら未来を切り拓いていけるはず。それには創造力や物事の本質を見抜く批判的な思考力、共同性といった能力が必要なんです。
もっと言うと、知識がなくても生きる力が高ければ、未知の問題や答えがない問題にも対応できるんです。

早期教育よりも本当に必要なものって?

熱心な親御さんのなかには、早期教育に力を入れて、幼少期に塾やいろんな教室に通わせている人がいますね。悪いとは言いませんが、でもね、それは頭の一部分を鍛えているだけであって、実は小学校4年生くらいになったら、その頃学んだことは大方消えてしまうそうです。それはもう脳科学でも証明されているの。

パパやママが本気で子どもの能力を伸ばしてあげたいと願うなら、早期教育よりも自然のなかでキャンプする方が断然おススメです! もともと自然体験が子どもの成長発達にいい影響を与えることは、あらゆる研究で証明されています。

体験的にも、林間学校に行ったり、臨海学校で遠泳をやったりしますが、生徒は終わって帰ってくると一回り大きくなっています。
自然体験がなぜいいかというと、「地頭」が鍛えられるからなんです。「地頭がいい」というのは、脳科学的にいうとHQ =ヒューマニティ・クォーシェントが高いということ。よくIQ(知能の指数)、EQ(情動の指数)と言ってますね。HQ とは「人間力指数」のことで、人間がもっているさまざまな能力を状況に応じて引き出して使う、コントロールセンター的な能力。サッカーや野球などの監督の役割ですね。

監督がいいと選手が伸びるように、HQ の高い人は社会のなかで生きていくための能力が高い。社会性や創造性、企画力、決断力などの能力に優れていて、相手の気持ちを汲んだ行動ができたり、諦めずに未来を切り拓く意志をもっていたりする。「未来型学力」とも言われていて、世界の教育者はこれを伸ばそうと言っているんです。この脳のコントロールセンター力、HQ がキャンプなどの自然体験で鍛えられていくんです。

8つの原体験が子どもの脳の“コントロールセンターを刺激

地頭を育てる自然のなかの8つの原体験の画像

学力の基礎・土台となる探究心や感性を高め、人格形成に大きな影響を及ぼすものに「原体験」があります。「原体験」というのは、自然のなかで火を熾したり、土や木のぬくもりを感じたり、昆虫や動物を間近に見たり触れ合ったりするといった、五感をフルに使うプリミティブな体験のこと。大自然のなかで行うキャンプには、こうした「原体験」が詰まっています。

とくに明かりひとつない漆黒の暗闇や、息も凍るような極端な寒さ、真夏の砂浜の灼熱の暑さといった、人間の力ではどうにもできない「ゼロ体験」をしてみると、自然に対する恐怖や畏敬の念が生まれて、人間のちっぽけさや限界がわかるの。とくに8歳頃までにこうした「原体験」の蓄積があると、「地頭」を向上させると言われています。尾木ママが「早期教育よりもキャンプが大事!」と言うのはそういう意味なんです。

自然のなかでの失敗や未知の経験が、子どもの地頭を鍛える

キャンプがいいのは、人からやらされるのではなく、自ら楽しんでやれること。主体的でないとキャンプはできないでしょ? 食事もつくらなければいけないし、寝る所もつくらないといけない。家族みんなで力を合わせて、一から衣食住をつくることを体験できるのは、キャンプぐらいじゃないかしら。

しかも予定通りにいくとは限らないのが、キャンプの醍醐味。突然雨が降ってくるかもしれないし、道具を忘れてしまって、 代わりの方法を考えなければならないといった想定外のことや未知のことがいろいろ起こる。そんな時、家ではゴロゴロしているパパが頼もしく見えたりするのよ! 普段とは違うパパやママの姿が見られたり、新しい発見がたくさんあるから、家族のコミュニケーションもグッと深まってくるの。
生きるという営みを通じて、社会をつくっていく体験ができるのが、家族キャンプの素晴らしいところね。

自然のなかでの失敗や未知の経験が、子どもの地頭を鍛える 画像2
尾木ママの写真

尾木ママ=尾木直樹(おぎ・なおき)
教育評論家。法政大学教職課程センター長・教授
臨床教育研究所「虹」所長。

1947年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、私立海城高校、東京都公立中学校教師として、22年間子どもを主役としたユニークで創造的な教育実践を展開。2003年より法政大学キャリアデザイン学部教授。2012年4月より現職。主宰する臨床教育研究所「虹」では子育てと教育、メディア問題等に関する現場に密着した調査・研究に精力的に取り組んでいる。Eテレ「ウワサの保護者会」、テレビ朝日「モーニングバード!」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などの情報・バラエティ・教養番組やCMにも多数出演、「尾木ママ」の愛称で幼児からお年寄りにまで親しまれている。中学、高校教師時代、2人の娘と共働きの夫人とともにワンボックスカーでキャンプを楽しんでいた。著書は200冊以上。