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キャンプは子どもを元気にする (2/3)

子どもの頃、「外に行って遊んできなさい」と親に促された思い出はありませんか?
日が暮れるまで思いっきり遊んで、家に帰ったら夕ご飯を食べて、ぐっすりと眠る…。
そんな当たり前のひとときが子どもの心と体に大切だと科学的に検証したのが、
日本体育大学の野井真吾教授です。
そこで、世田谷区の静かなキャンパスを訪ね、外遊びの効果についてお聞きしました。

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  さて、もうひとつの要素である生体リズムについても、先生は現場での体験をもとに深く掘り下げていきました。このリズムに大きく作用するのがメラトニンという物質で、体温を下げて眠りを誘う鎮静作用を持っています。また、抗酸化作用によって細胞を守ったり、性的な成熟を抑制したり…という効果も知られていますが、長期キャンプによってこの分泌がどう変わるかを調べてみると、驚くべき結果が現れました。
「キャンプに参加する前の子どもたちは、睡眠を誘うメラトニンが夜9時半よりも朝6時にたくさん分泌していました。これでは夜なかなか眠れず、朝起きられないのも当然です。しかし、キャンプに来ると、夜9時半の分泌が急増して、朝6時の分泌が激減したんです。つまり、子どもたちの体が、夜眠くなって朝にはきちんと起きられるようになるんですね」。(グラフ1)

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グラフ1:長期キャンプ(30泊31日)と唾液メラトニン濃度

  では、なぜ子どもたちのメラトニンの分泌が変わっていったのでしょうか。先生はメラトニンの元となる物質が重要だといいます。
「メラトニンの元となる物質がセロトニンです。これは必須アミノ酸であるトリプトファンから作られます。そのため、乳製品などの食事をきちんと摂ることが大切ですが、運動や深呼吸も大切です。また、何よりも日中に日光を浴びることで分泌されるんです。ですから、朝ご飯を食べて、運動し、日光を浴びることがセロトニンを生成するのに重要ということになるんですね。キャンプはまさにそんな毎日ですから、セロトニンもきちんと作られるのでしょう」。
  先生は、都会で頻発するトラブルにもこのセロトニンが関係していると推測しています。
「セロトニンのもうひとつの役割が精神の安定なんですね。最近、学校でイライラする子どもが増えてたり、電車の駅で肩がぶつかったくらいで刺しちゃったり…なんてことも、日本全体がセロトニン不足になっているからではないかと思っています。……それともうひとつ。最近、姿勢の悪い子どもが増えていますが、これにも密接な関係があります。重力に逆らってきとんとした姿勢を保つには、爆発的な筋力は必要ないんですが、ずーっと持続的に緊張し続けなければなりません。この筋肉に作用しているのもセロトニン神経なんです。姿勢が悪いのは筋力が弱いからじゃないかと思いますよね。でも、そうだったら柔道部の子やサッカー部のメンバーは姿勢が悪いわけがない。なのに、軒並み悪いんですよ。筋力はあっても緊張させ続けることができないんです」。
  寝つきや寝起きが悪い、イライラする、集中力が不足している、姿勢が悪い…その原因がどうやらセロトニン不足にあることが分かってきました。しかし、現代の生活から、セロトニンが生まれやすい環境はどんどん少なくなっています。日中の光を浴びる外遊びはなかなか楽しめませんし、夜は過密スケジュールで塾や習い事が待っています。遅くまでテレビが楽しげな誘惑を続け、コンビニやスーパーは昼のように煌々と照らしています。そんな環境で「早寝早起きしなさい!きちんと朝ご飯を食べなさい!」って言われる子どもたちが少し気の毒になってきますね。