2011年02月22日
OUTDOORMAN's COLUMNあの時の感動を忘れない

初めてダッチオーブンを手に入れたのはもう10年以上前になる。
本格的にキャンプを始める前のことだ。
若い頃は夏場になると河川敷や海辺で仲間たちとバーベキューをやった。汗だくになって炭を熾し、ホームセンターで買った安いバーベキューグリルで肉を焼いて食べる、ただそれだけで満足だった。
そんな典型的なBBQ野郎が密かに憧れていたキャンプ道具があった。スポーツ専門店のキャンプコーナーの陳列棚に鎮座する重厚な鋳鉄の鍋。そう、ダッチオーブン様だ。
中高生の頃からポパイやホットドッグプレスなんかを愛読していた僕は、その鉄鍋の存在を知っていた。そんな雑誌のアウトドア特集で取り上げられていた魔法の鍋。トライポッドに太い鎖で吊り下げられて、赤々と燃える炭火の上で熱せられ、それどころか上蓋にまでも炭が乗せられた写真に釘付けになった。しかもその横の写真にはこんがりとキツネ色に焼けたチキンが丸ごと鍋に入ってるではないか!この無骨で飾り気のない、頑丈さだけが取り柄のような鉄鍋におあつらえ向きのワイルド感たっぷりの料理。これぞ男!これぞアウトドア料理!と興奮した記憶がある。
そんな憧れのダッチオーブンは、当時でも10インチが7、8千円ぐらいだっただろうか?アウトドア初心者…というか“夏だけBBQ野郎”の僕にかなり高額に思えた。スポーツ専門店に行く度に眺め、諦め、眺め、諦めを繰り返したのち「あの鶏の丸焼きを作るにはダッチオーブン買うっきゃねー!」と昭和言葉で決意を固めて購入した。
ダッチオーブンレシピの本も買い込み、自宅でじっくり時間をかけてシーズニングし“グリルド・チキン”のレシピも熟読。脳内でシミュレーションを繰り返し、いよいよダッチオーブンデビューの日が来た。
いつものように海辺で仲間たちとバーベキュー。いつもと違うのはダッチオーブンがあること。クーラーボックスにはハナ〇サで買ったチキングリラー(冷凍の丸ごとチキン)が自然解凍されながら出番を待っていた。
いつものように汗だくで炭を熾し、みんながカルビやフランクフルトを焼きはじめた頃、おもむろにケースからダッチオーブンを取り出す。
「なんすかそれー!」と仲間の声。
「あこれ?ダッチオーブン」と僕。
初めて使うのに、もう何回も使ってるよという体(てい)なのでニヤケそうになるのを必死でこらえる。
オリーブオイルとハーブソルト・黒胡椒をたっぷりすり込んだチキンをダッチオーブンの中に入れ、鍋ごと炭火の上に乗せる。もちろん蓋の上にも炭を並べる。待つことおよそ40分。蓋を開けるとそこには皮目がきつね色に輝く丸ごとのチキンが姿を現す。鍋底では肉汁と油が爆ぜてジュウジュウ音を立てている。
あの雑誌で見た鶏の丸焼きができた!!初めてなのにできた!!!
と叫びたいくらい嬉しいが、友達の前では初めてじゃない体なので、事も無げにチキンを切り分ける。カットしながら最初の一口を頬張ると皮はかりっと香ばしく中はジューシー、オリーブとハーブの香りも鼻腔を抜け、塩加減もばっちり。思わず「んめーっ!!」と叫んでしまった。初めてじゃない体なのに…。
この時の感動を、今も忘れはしない。おそらくこの経験がなければその後本格的にキャンプにはまることもなかったのかもしれない。
きっかけは人それぞれだと思うが、僕はダッチオーブンからアウトドアの魅力の一つを教わった気がする。
見た目や形から入ってもいい。そこに感情を突き動かすものがあるとしたらそれは“本物”に違いない。
Peace out.
渡辺信吾
キャンプ情報携帯サイト「GO!GO!CAMP」の編集長。通称:BINGO☆
長崎県の某離島出身。横浜国大卒。波乗り、雪乗り、旅、キャンプで一年中真っ黒。
GO!GO!CAMP 携帯から http://gogocamp.jp/
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