今井寛

オペレーションマネジメント本部 サプライチェーンマネジメントグループ 課長代理

今井寛
生産から店頭までを川のように淀みなくつないでいくプロフェッショナルだ

この企画でいろいろな部署、いろいろな方にお会いして、コールマンを支える想いや情熱に触れてきたが、それにしても実にさまざまな職種があるものだと感心する。

しかし、今回、また新たな業務と出会うことになった。 ゲストの肩書はオペレーションズマネジメント本部 サプライチェーンマネジメントグループ 課長代理。たいへん失礼だが何がなんだか分からない。…で、名刺をよく見るとその下に漢字が並んでいた。 需要・仕入・在庫計画課…何となく見えてくる。どうやら、商品の流通を管理する方のようだ。

求めたのは笑顔になれる仕事

現れたのは今井寛さん。北海道は江別の生まれだという。 「北海道には高校までいました。大学以降こっちです。(北海道は)大好きですね。何よりも人が好きです。いい意味でのんびりしてるし。北海道の冬って明るいんですよ。特に夜が…。一面雪でしょう? 足元など下の方が白いから、夜、街灯が点くと周りがぼおっと明るくなって、それがとってもいいんです。正月に帰省したんですけどね、あらためてそのよさを感じました。まぁ、故郷ってひいき目で見ちゃうことがあるかもしれませんけどね」。

道産子らしくウインタースポーツと共に育ったという。

「スキーはすごくやりましたね。物心ついたころには誰かにくっついて必ず出かけていましたし。学校でもスキー授業。むこうでは校庭に(スキーのために)雪山を作っちゃいますから」。

実は私も北海道育ち。幼稚園から小学校の低学年までだったが、小学校ですら週に1日はスキーだけの日があった。何日分かの体育の授業を1日にまとめてしまい、その日は朝からスキーを担いで登校する。私の通った小学校には小さなジャンプ台まであった(笑)。 「野外での遊びは好きでした。兄がいましたから一緒に山に入ったり、虫獲りとか…自然が多い土地柄ですからね」。

大学に入った今井さんはスキーやテニスのサークルに多くの時間を割くようになる。 「最初の海外は卒業旅行。スキーでカナダに出かけたんですけどね。ウイスラーとか。友だちと行くはずだったんですが、(彼が)ヘルニアになっちゃって、ひとりで行く羽目になりました」。

その経験が後押ししたのだろうか。社会人のスタートは旅行会社だった。

「海外旅行専門の会社でした。大学生って人生でいちばん遊ぶ時期じゃないですか。そこから社会に出る時ってやっぱりいろいろ考えますよね。友だちは金融に進んだ者が多かったんですけど、僕はなんとなく楽しいことに関わっていきたいなって思ったんです。しかめっ面ばかりの社会人になりたくないなと。少なくとも旅行の世界は、パンフレットを開いた瞬間から楽しさがいっぱい。みんな笑顔になりますよね。そういうことに関わりたいと思ったわけです。それと………基本的に飛行機が大好きなんですよ。島国の北海道で育ちましたから、移動には小さな頃から飛行機が身近。それで旅行会社を選んだんです」。

しかし、旅行会社でのキャリアは5年で終止符を打つ。倒産してしまったのだ。

「入るまではわくわくしてましたけど、やっぱり仕事ですからいろいろあります(笑)。でも、楽しかったですねぇ。なによりも休みがとりやすいんですよ。それに、海外旅行に特化した会社でしたから、PRしたい海外の旅行代理店からインビテーションなどで招待が届きます。つまりただで行けたんです。個人的な旅でも安く行けましたし、休みを取るにも“(勉強になるから)行っておいで!”って感じでした。思い出に残っているのはドイツですね。北海道にちょっと印象が似ているかな。ヨーロッパって6時、7時でもびっくりするくらい日が高くって明るいんですよね。いつまで昼なんだろうと…」。

次に門を叩いたのはまったく別分野のアパレル業界だった。

「別にどうしても行きたかったってわけじゃないんですけど、食べるために仕事を見つけなきゃって(笑)。担当したのは分析のような仕事です。男女の売り上げ比率や、在庫に関する管理、つまり販売の戦略を立てるための調査です」。

ここでの分析や調査という経験が現在の彼のベースを作ったのかもしれない。話を聞いていて、現在の肩書にオーバーラップするイメージが湧いてきたからだ。

「そのうち子どもができましてね。三つ子だったので生活の基盤を安定させなければならないな…と。それでいろいろ捜してコールマンを見つけました。2003年、入社の10日前に生まれたんで、私の社歴と子どもの年齢は同じなんです(笑)。入ってみて驚いたのは、社員が若いこと。コッテコテで、この道長そうな職人気質のアウトドアおじさんが開発や企画をやってると思っていたんです。でも実際には、ずっと若いメンバーがてきぱきと仕事をしていました」。

サプライチェーンって?

当時、コールマンは物流の管理部門を立ち上げようとしていた。増加する商品アイテムと販売量、それに伴う膨大な物流を効率よく管理することが求められるようになっていたからだ。つまり、今井さんはその担い手として請われたわけである。

「もちろん、コールマンは知っていましたよ。自然豊かな北海道で育ったせいか、野外の生活が普通にあって、わざわざアウトドアをやろう!っていう意識はなかったんですよ。だから自分で使ってはいなかったですけどね。仲間にキャンプ好きはいましたし、僕もバーベキューは好きだったので川原で見かけていました。サプライチェーンマネージメントを立ち上げるということで入りましたから、初めからこの仕事です」。

じゃぁ、アパレル時代と同じような仕事ですね…と、問いかけると、少し間が空いた。 「う~ん、たしかにアパレルの時とダブる部分もあるんですけど、コールマンでの仕事の方がはるかに深く掘り下げていますね」。 そう口にする彼の顔には“どう説明したらいいんだろう”という困惑のようすが見てとれた。

「私の業務は、売り上げの予測をして、商品の発注計画を組み、実行していきます。このひとつの大きな流れがサプライチェーンなんですね。工場からお客さんまで、商品の流れをまさに鎖のようにつないで管理していくという考え方で、私はそれぞれのプロセスの最適化を心がけています」。

やっぱり表情には“なんて言えば分かってもらえるかなぁ…という困惑が浮かんでいる。とはいえ、この出来の悪い生徒に、微笑みながら一生懸命、言葉を選んで説明するあたりに彼の誠実さがにじみでていた。

「具体的に言えば、まず、営業担当が市場でどの時期にどれくらい何を必要とするかを予想するわけです。彼らから上がってくる“何をどのくらい売るか”という情報を元に、どのタイミングで工場から市場に投入すればいいかを考える…って感じですね。その結果、不要な商品が倉庫に山積みされていたり、欲しがられている商品が欠品したりということを減らすことができるんです」。

台湾でのキャンプイベントに参加した今井さん
台湾でのキャンプイベントに参加した今井さん

無駄な在庫を減らし、必要なものを必要なときに供給する…これはなかなか手強い仕事である。

「そりゃ予測は難しいですよ。ここで簡単なんて言ったら大変なことになる(笑)。でも、だいたいのトレンドはあるので、それをベースに考えます。やっぱり売り上げをどんどん伸ばしていくという考え方を基本にしないといけないんですよ。下手したら、僕の考え方ひとつで、もっと売れたはずの商品にブレーキがかかることも起きてしまうわけですから。いくら過剰な在庫を避けたいからって、守りに入っちゃいけないんです。バランスですよね。売りと在庫の…」。

過剰な在庫は企業の首を絞める。が、それを恐れて供給を減らせばニーズに応えられず、業績も伸ばすことができない。その、なんとも微妙なさじ加減…。

「予測が外れることもありますよ。たとえばコンビニハンガーっていう商品。洗濯バサミみたいなもので、ビニール袋を引っかけて使うんですけど。“こりゃそんなに売れないでしょう…”って思ったんです。でもフタを開けたらドーン!って大ヒット。びっくりしました。反省を込めて自分なりに分析したんですけどね。商品コンセプトがユーザーに分かりやすかったんだろうな…値段も1000円以下なんで躊躇しなかったんだろうな…って。 こういうケースは、続く第二の商品につなげていかなければならないので、また頭を悩ませます」。

予測と異なった結果になることもある。思ったより売れた場合とその反対。どちらが印象に残りますか…と尋ねてみた。 「思ったよりも売れてしまった時のほうが、自分には役に立ちますね。それは欠品につながることがあるわけで、営業担当から苦情がどんどん寄せられるわけですよ。そうすると、二度とこういう想いはしたくない…って思います。やけどみたいなもので、熱いやかんに触ったら2度と触らないじゃないですか(笑)。思ったよりも売れなくて在庫が残る場合ももちろん問題なんですけど、それは自分でどうにか処理すればいいので…。とにかく着いてる火は消さなきゃならないですからね」。

どうやらコンビニハンガーは、相当“効いた”らしい。

コンビニハンガーでの経験は大きな教訓になったという
コンビニハンガーでの経験は大きな教訓になったという

ユーザと商品の出会いを創りたい

さて、今回のインタビューでどうしても聞いてみたいことがあった。それは、今井さんにとってモチベーションの源がどこにあるかという点である。たとえばプロダクトマネージャーなら自ら手掛けた商品がユーザーから評価されたり、広報なら関わった記事がユーザーである読者に好評だったり…と、なんらかの形でエンドユーザーとの接点に、自分のモチベーションを賭けることができる。やりがいというと平易に過ぎるかもしれないけれど、残酷に言ってしまえば自分の存在意義をどこに見出しているのか…。

「そうですよね。たしかに僕は一見エンドユーザーと遠い所にいますからね。でも、やっぱりユーザーとの関わりを強く感じているんです。お客さんがなんでウチの商品をお買い上げくださったかといえば、“欲しい!”っていうのもあると思うんですけど、近くのお店にいったら店頭にそれがあったということも大きいと信じています。何よりも『店頭にその品物がある』ということ…それがサプライチェーンの最初の役割だと思ってるんですよ。利益や効率も大事ですけどね。つまり、お客さんとコールマンの商品をできるだけ近づけたい。わざわざ隣町まで20㎞も30㎞もクルマや電車で買いにいかなくても、営業と協力しあって、お客さんの普段の行動範囲に近い所、目につく所、手に取っていただける所、商品と出会えるそういったチャンスを増やすのが僕の仕事です。チェーンのすべてのプロセスが適正化されて、きちんとつながった時に初めてそれが実現するんです」。

数日前にも近くの量販店でコールマンのチェアを見かけたが、そんな日常の光景の陰に彼の地道な努力があったのである。

お子さんとのキャンプは今井さんの大切なひとときだ
お子さんとのキャンプは今井さんの大切なひとときだ

お決まりではあるけれど、今井さんにとってコールマンはどんなブランドであってほしいですか?と尋ねてみた。

「コールマンという名前を見るだけでニッコリ笑顔になってしまうようなブランドであることですね」。

間髪いれずに返ってくる。パフレットを開いた瞬間に笑顔になる仕事…彼が旅行の世界に飛び込んだ理由が頭をかすめた。想いはつながっていたのだ。

「そして、最初はコールマンを使っていなくても、いつかは使ってみたいなっていう憧れの存在になりたい。そのためには社員全員がお客さんを喜ばせたいという思いを共有することが大切だと思っています。桜って、花びらだけがあの桜色なのではなくて、根や幹などからも出るらしいんです。同じようにコールマンも、どこを切っても同じ色が出る会社でありたいですね」。

最後に、またまたお決まりの質問。お気に入りのコールマン製品を教えてください…と頼んでみた。

「ホットサンドイッチクッカーですね。僕自身、あまり料理が得意じゃないんですよ。子供とキャンプに行くこともあるんですけど、そんな時、パンを挟んで焼いておけばとりあえずお腹いっぱいになって、み~んな笑顔になるんです」。

自分が関わるすべての人に笑顔でいてほしい…今井さんとの1時間半は、振り返ってみるとそんな想いに包まれていたような気がする。 キャンプ場で撤収とか手間取っている人を見るとつい手伝っちゃうんです、と笑った彼。もちろん、そんなシーンには笑顔が溢れていたはずである。

今井さんの家族を笑顔でいっぱいにする魔法のツール、ホットサンドイッチクッカー
今井さんの家族を笑顔でいっぱいにする魔法のツール、ホットサンドイッチクッカー
取材と文
取材と文

三浦修

みうらしゅう

コールマンアドバイザー。日本大学農獣医学部卒。つり人社に入社後、月刊 Basser編集長、月刊つり人編集長を経て、2008年に広告制作、出版編集、企画、スタイリングなどを手がける株式会社三浦事務所設立。自称「日本一ぐうたらなキャンプ愛好家」。

1960年生まれ。千葉県市川市在住