柏原美紗

営業本部 東京営業所 セールスアドミニ・チームリーダー

柏原美紗
柏原美紗(かしわばら・みさ)東京営業所主任

コールマンというブランドへの誇りや自信。それは、プロダクトの最前線と営業のリーダーという象徴的なおふたりに会って感じた共通の印象である。

そんなある日、興味をそそる話が寄せられた。藤井さんが語っていた営業の最前線…そのひとつである東京営業所を支える女性スタッフがいるという。かつてコールマンジャパン本社近くの喫茶店でアルバイトをしていた彼女は、当時の幹部に熱心に乞われて入社したとか…。コールマンが見染めた才媛。これは会わないわけにはいかない。

営業所というビジネスの拠点

一般的なアウトドア業界で働く女性のイメージとはちょっと違う雰囲気を漂わせながら現れたその人は、柏原美紗さん。どちらかといえば丸の内あたりでランチをとっているような雰囲気で、言葉を変えれば、ちょっと"らしくない"。が、藤井さんの時と同じようにそれは私の早合点だった。話を伺うにつれ、実に誇り高い骨太なコールマンの一員であることを思い知らされたのである。

ひと言ひと言に込められたブランドへの愛情や自信。その深さと卓越した営業スキルを身につけた柏原さんは、まさにアウトドアビジネスの手練れだった。

「社歴は長いですね。たぶん、こんな入社のきっかけって社内でひとりだけだと思うんですけど(笑)。大学時代、この近くの喫茶店でアルバイトをしていたんですね。そこにコールマンの方々がよく来ていたんです。その中にいた当時の副社長が"どうだ、うちに来てみないか"って誘ってくださったんですよ。

私は大学3年生だったので、そう伝えると"えっ?4年生じゃないの?すぐ来てほしいのに…"って(笑)。1年後、忘れたころに自宅へ突然電話が掛かってきまして"明日、面接に来て!" (笑)。教職資格もとり、教育実習も終えたところだったので、教員になろうかなって思っていたんですが、これも何かの縁かな?と入社を決めました」。

こうして始まった柏原さんのキャリア。しかし、キャンプとの出会いは入社後だったという。

「キャンプの経験がなかったので、それまではコールマンというブランドも知らなかったんです。入社後、はじめて行ったキャンプは大嵐で横なぐりの雨でした(笑)。2回めは山中湖で天気もよくって自転車で湖岸を走ったり…。いいなぁと思いました」。

一般的な営業職の仕事ぶりは想像がつくのだが、柏原さんのような営業所のスタッフはどのような業務を担当しているのだろうか。

「入社以来、営業所ひと筋です。私の部署っていうのは、起伝、つまりお客様から入った注文をもとに伝票を起こして、倉庫にそのデータを送るという仕事なんですね。ただ、仕事の相手が一般のユーザーではなく販売店であったり代理店で、そういった方々からの受注業務が主です。あとは営業のサポートですね。営業のチームは(外を回っていて)社内にいないことも多いので、資料整理のお手伝いもします」。

後方支援のようなものだろうか…漠然とした想いを膨らませながら話を続けたのだが、そんな甘いものではないことを徐々に知らされることとなったのである。

東京生まれの東京育ち。入社するまではアウトドアとは無縁で、教師を目指していたという。
東京生まれの東京育ち。入社するまではアウトドアとは無縁で、教師を目指していたという。

電話応対から商品説明、クレーム対応まで

「伝票の仕事以外は、販売店などからの電話応対です。特に営業担当者への指名がなければ私たちが受けるんですが、1日に100とか200といった数なので、それでかなりの時間を費やしますね」とさらりと言う柏原さん。

仮に100本の電話を受けるとしても8時間で割れば、1時間あたり12本以上!伝票を作成しながらの作業となると、これは相当なハードワークである。が、そんな認識も甘いことを知らされる。

「もちろん、電話では受注や在庫の確認をお受けしますが、商品の使い方やスペックに関する問い合わせ、商品不良、クレームへの対応も含まれます」。

またまた涼しい笑顔だ。あの厚い総合カタログを埋め尽くす商品数を考えれば、そのひとつひとつのスペックに関する問いに答えることが至難の技であることは、容易に想像がつく。

「最初の頃は、カタログを見ながら必死で勉強しましたよ(笑)。今でも、だいたい頭に入れておくように努力はしていますが、アイテム数が膨大なので、カタログを見ながらお答えすることもあります。私たちの部署は商品を横に並べてお電話を受けているわけではないんですが、やはり現物を見ながら話すのとそうでないのでは全然違います。ですから、込み入った問い合わせの場合は、社内のストックしてある場所に急いで走っていって、確認することも多いですね。さらに、カタログや現物確認だけでは分かりにくいことは、マーケッティングの商品担当に直に聞きに行きますし、修理に関しては松戸の修理センターに問い合わせます」。

聞いている私の方が疲れを感じてしまうほどの幅広い守備範囲。目の前の細身の女性がさらりと口にする仕事の量とクオリティは私の想像をはるかに超えていく。

入社以来、営業所ひと筋という彼女。その仕事はスピードと正確性につきる、と断言する。
入社以来、営業所ひと筋という彼女。その仕事はスピードと正確性につきる、と断言する。

スピードと正確性が命・・・すべては1本の電話から

"ある意味でコールマンの表看板ですね"と声をかけると、柏原さんは、はにかみながら、しかしきっぱりと答えた。

「営業部にお電話をいただいて、最初に出るのは私たちの部署ですから」。

そこには、営業の最前線を支える仕事への誇りが薫る。

「スピードと正確性。私たちの仕事はこれに尽きますね。とはいえ、対応数が半端ではないので、1日中、処理をするためにいろいろな部署を駆け回っています。また、時期によってはストックが少ない場合もあるので、そのあたりは臨機応変さを心がけます。 そして、自分の目線で応対すること。レジャー用品には、スペックなどでは言い尽くせないことがたくさんあるんですが、それを純粋に私の目線でお伝えしようと思っているんです。たとえば、デザインがすごくかわいいと感じたらそれを素直に伝えますし、自分で使ってみて"この部分がすごく使いやすく作られてるね"っていうことになったら、どんなに小さなことでも紹介します。お客様が望んでいるカラーが欠品でも、自分がいいと感じているカラーがあれば自分の言葉でお伝えして、喜んでいただいたこともありますよ」。

仕事のやりがいを感じる時は?と尋ねると、その表情が急に和らいだ。 「ありがとう、って言われたときですね。"柏原さんに聞いてよかった"という言葉もうれしいです。でも、レジャー用品の仕事ですから、あまり重々しい応対はいけないと思ってるんですよ。明るくて楽しい雰囲気でお話したいと。クレーム案件は別ですけどね」。

レジャー用品と言えば、気になるのは天候や気温の変化。冷夏、長雨、猛暑、暖冬、少雨…屋外の遊びだけに、移り気な日本の天気に振り回されることも多いはずである。

「天気予報は絶対見ますね。絶対見ます。代理店や販売店の方は、やっぱりそういったことを気にされてると思うんですよね。電話でも"天候ありきだよね"という話はよく出ますし。天気予報を見ておいて、"今週、この商品を少し多めにしたらどうですか?"みたいな流れになることも多いですから」。天気予報をさりげなく営業活動に活かすセンス。そのあたりに百戦錬磨の営業魂が見え隠れする。

女性の視線で捉えるキャンプの楽しさ

さて、受注や在庫の調整などに関わっていれば、予想外のヒットに出会うこともあるのではないだろうか。この多様化した情報社会において、商品の売れ行きは必ずしも売り手の思い通りにはいかない。

「社内で、これ絶対売れるね!なんて言ってたのがそうでもなかったり、その反対もあります。特に小さなアクセサリー。なぜこれがこんなに売れるのかなぁ…なんてことがあるんです。たとえば、ハンギングドライネット。ちょっと地味な商品なんですけどね(笑)。毎年、ある時期になると、突然動き出してすぐになくなってしまいます」。

きっかけはあるウエブサイト。そこでハンギングドライネットの干物作りへの転用が紹介されると、瞬く間に広がっていったのである。青い安物ネットに比べれば、マンションの軒先に下げても見栄えがいいし、円筒形のデザインは風にも強い。

何よりも、しっかりした造りのよさが評判だ。"でも、変な用途ですよねぇ"と、この裏話を伝えると…。

「嬉しいですね!うちの商品をそうやって喜んでいただいているのを聞けるのがとても嬉しいです。普段、販売店の方を相手にしているので、ユーザーの声や実際に使っているようすを直接聞くことがそんなにありませんから。休みの日に公園へ行った時、 (コールマンの)シートを敷いてくれているのを見たりすると、これって私が(伝票データ)を打ったのかも?なんて思うんですよ。」

「また、私の担当エリアのお店の近くを通りかかると、ちょっと覗いたりします。"あ、ちゃんと入ってる"とか、"少し在庫が足りないな"と確認しながら、ウチの商品を前のほうにそっと動かしちゃったりして(笑)。キャンプ場でも、ものすごく気になりますよ。"これだけコールマンの商品を使ってくれている人がいるんだ"って実感しますし、頑張ってる甲斐があると思いますね」。柏原さんの目指すキャンプのスタイルってどんなものですか?

そんな問いかけには、少し照れくさそうな表情を見せた。

「女の子目線って笑われてしまうかもしれませんが、明るく楽しいキャンプでしょうかね。色とかデザインもきれいなキャンプがいいですね。女子会キャンプ?なんていうのもいいんじゃないでしょうか。

そんな気軽なキャンプが広がったらと思いますし、そのためのプロジェクトがあったら、ぜひやってみたいですね」。  

営業の一角を担う強い自覚と女性の細やかな気配り。そして何よりもコールマンの一員としての誇りに満ちた柏原さんの姿に感服しながら、インタビューは最後の問いになった。

夢はありますか?という決まりきった質問だ。

「できることなら、将来自分に家族ができた時に、子どもにキャンプの体験をさせたいですね。絶対、楽しい思い出になるでしょうし。そう思っています」。  

ひとりの女性としての素直な言葉がこぼれる。

「すみません。私の話って、なんだかアウトドアっぽくないというかキャンプっぽくないことばっかりでしたね」。

そんなひと言で締めくくった柏原さん。しかし、そこにはアウトドアシーンの雄たるコールマンの一角を担う自信が漂っていた。

ハンギングドライネット。食器などを乾燥させるための吊り下げ式の円筒型ネットだ が、実は最近、私の周辺でも人気の高い商品だった。それもキャンプに縁のない面々 に広がっていて、ある調理具として使われている。それは干物作り。<br />
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釣り上げた新鮮な魚で作った一夜干しはまさに絶品なのだが、これまでは釣具店など で売られている薄いブルーの安っぽい魚干し網を使うことが多かった。
ハンギングドライネット。食器などを乾燥させるための吊り下げ式の円筒型ネットだ が、実は最近、私の周辺でも人気の高い商品だった。それもキャンプに縁のない面々 に広がっていて、ある調理具として使われている。それは干物作り。

釣り上げた新鮮な魚で作った一夜干しはまさに絶品なのだが、これまでは釣具店など で売られている薄いブルーの安っぽい魚干し網を使うことが多かった。
取材と文
取材と文

三浦修

みうらしゅう

コールマンアドバイザー。日本大学農獣医学部卒。つり人社に入社後、月刊 Basser編集長、月刊つり人編集長を経て、2008年に広告制作、出版編集、企画、スタイリングなどを手がける株式会社三浦事務所設立。自称「日本一ぐうたらなキャンプ愛好家」。

1960年生まれ。千葉県市川市在住

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